さる6月12日、ウイーン生まれのドイツ語圏の代表的詩人H.C.アルトマンの生誕100年を記念した国際シンポジウムがオーストリアのザルツブルク大学で開催されました。このシンポジウムには、日本からオーストリア文学研究者の真道 杉日本大学法学部教授が参加され、1987年11月3日~7日に大岡信、谷川俊太郎、アルトマン、パスツールが参加して行われた連詩「ファザーネン通りの縄ばしご」について当時の写真も活用されて、オンラインで発表されました。聴衆からの質問が出て、関心の高さが感じられたとのことです。大岡信が海外にも撒いた連詩の種がこのような形で開花し、継承されているのは大変喜ばしいことです。
お知らせ:ズームによる第二十回大岡信研究会(終了しました。) 5月30日(日)講師:池澤夏樹氏(作家、詩人)
創作はまず自分による批評にさらされる。だからイェイツは「われわれは他人と口論してレトリックをつくり、自分と口論して詩をつくる」と言った。ぼくは『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』を作りながら、批評という行為が創作(や翻訳)と並んで文芸の基礎にあることを確信した。詩人は右手が書くものを左手で抑制・誘導しながら自分の境地を作る。ヤコブのように夜中に天使と格闘する(「創世記」32)。大岡信は最初から批評性の強い詩人であった。この講演ではこの戦いの内実を解明したい。(池澤夏樹)
日時:2021年5月30日(日)14:00~15:30
開場受付:当日13:30からご入場ください。
形態:ズームによる視聴
講師:池澤夏樹(作家、詩人)
演題:「大岡信―内なる批評家との戦い」
会費:会員(無料)。会員以外の方は1000円を、当日視聴が実現した上で、当日以降6月10日までに郵便振替口座00150-8-450238にお振込みください
〇参加の申し込みは、こちらからをクリックして2021年5月26日までにお申し込みください。
〇参加を申し込まれた方には、5月27日に30日当日に使用するズームのアドレスをメールにて送信します。
〇ズームの運用テストに参加ご希望の方は、下記の日程からご希望の日時を選び、氏名、希望日時、電話番号(各必須)を明記の上、ホームページの「お問い合わせ」から5月21日までにお申し込みください。テストへの参加は研究会参加申し込みの方に限られます。テスト日時:5月22日(土)20:00~20:30;5月23日(日)14:00~14:30
講師紹介(池澤夏樹氏): 1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。多くの旅を重ね、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。1987年に『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』、『花を運ぶ妹』、『静かな大地』、『キップをなくして』など。 編著に『池澤夏樹¬=個人編集 世界文学全集』と『池澤夏樹¬=個人編集 日本文学全集』がある。現在、朝日新聞に小説『また会う日まで』を連載中。
第十九回大岡信研究会報告:「今日は俳句を読んでみよう~『折々のうた』の俳句を読む」講師:高柳克弘氏(俳人)
第十九回目となる大岡信研究会は、前回に続きズームでの研究会となった。俳人の登壇は、第一回の長谷川櫂氏に次いで2人目。ともに『折々のうた』をテーマにした講演であったが、長谷川氏が『折々のうた』の大アンソロジーとしての歴史的意義を語ったのに対し、高柳氏は、『折々のうた』の鑑賞文にみられる大岡の独自性を探る内容であった。
大岡の文章は、鑑賞文としてあるべき要素が凝縮されていて、作者の来歴、句の意味する内容、ほかの作品との響き合いが、バランスよく配されている安定したテクストであることを氏はまず指摘した。その一方で、大岡の鑑賞文には、過剰で逸脱しているところもあり、そこが大岡の鑑賞文のおもしろさではないかと語り、具体的な例を紹介しながら読み解いていった。
松本たかしの句<金粉をこぼして火蛾やすさまじき>の鑑賞では、「焼かれつつ舞いつづける蛾」と表現している箇所に注目し、「舞い」という言葉をあえて入れたところに、能役者の家に生まれたという作者の来歴を知った上で鑑賞する大岡の特長と、過剰でやりすぎのところがある大岡ならではの表現がみられるとし、そこが氏にとっておもしろく、惹きつけられるところだという。また、かならずしも主題が同じとも言えないゲーテの詩「浄福的な憧れ」を響き合わせることで、死をもって生まれ変わろうとする煌きや力強さを想起させ、松本たかしの句意に膨らみが生まれることを指摘した。
野沢凡兆の<鶯や下駄の歯につく小田の土>では、「足をとられてつい舌打ちするような時」と対象に成り変ってしまう憑依的な大岡らしい表現が見られると指摘した。
詩人の感性で与謝蕪村を「創造的誤読」していた萩原朔太郎と同じように、大岡の『折々のうた』にもユニークな視点やときに「創造的誤読」が垣間見られ、それだからこそ価値があり、豊かさがあるのではないかと語った。
さらに氏は、大岡が俳句において何を大切にしていたのかを『折々のうた』の鑑賞文の行間から読み解いていった。氏によれば『折々のうた』の俳句鑑賞において、「転じる呼吸」や「一気呵成の言葉の力」など呼吸についての言及が多いことを指摘。大岡が、俳句の真の価値を「音韻」や「呼吸」に見出していたことを示唆するとともに、風格や品位など句がもっている格調の高さを重視していたことを推察した。
今回の講演では、俳人の視点から『折々のうた』に新しい光が当てられ、大岡の鑑賞文のもつ豊かさと、『折々のうた』の新しい読み方を知ることとなった。さっそく再読して大岡ならではの鑑賞を探ってみようと思った。
(渡辺竜樹:大岡信研究会会員)
お知らせ:ズームによる第十九回大岡信研究会のご案内(終了しました)
俳句を「詠む」人は多いのですが、深く「読み」、さらにそれを人に伝えることができる人は、希少といえます。大岡信は、「読む」ことの達人であり、『折々のうた』は、俳句の読み方のテクストといえるでしょう。大岡信の句の読み方は、言葉の分析にとどまらないで、作者の人間像、時代性、表現史などを踏まえた、じつに豊かな読み方です。この講演では、主に芭蕉や蕉門の句を、大岡信がどう読んでいるのかを見ていきながら、研究者や専門俳人とも違う、その独自性を探っていきます。(高柳克弘)
日時:2021年3月28日(日)14:00~15:30
開場受付:当日13:20からご入場できます。13:50までには入場を完了してください。
形態:ズームによる視聴
講師:高柳克弘(俳人)
演題:「今日は俳句を読んでみよう~『折々のうた』の俳句を読む」
会費:会員(無料)。会員以外の方は1000円を、当日視聴が実現した上で、当日以降4月2日までに郵便振替口座00150-8-450238にお振込みください。
〇参加の申し込みは、こちらからをクリックして2021年3月22日までにお申し込みください。
〇参加を申し込まれた方には、3月24日に28日当日に使用するズームのアドレスをメールにて送信しましすので、ご確認ください。25日にも届いていない場合は、「お問合せ」からご連絡ください。
なお、会員の継続をご希望の方で2021年度会費をまだ納入されていない方は、3月25日までに年会費の振り込みをよろしくお願いします。
講師紹介(高柳克弘): 1980年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学教育学研究科博士前期課程修了。専門は芭蕉の発句表現。2002年、俳句結社「鷹」に入会、藤田湘子に師事。 2004年、第19回俳句研究賞受賞。2008年、『凛然たる青春』(富士見書房)により第22回俳人協会評論新人賞受賞。2009年、第一句集『未踏』(ふらんす堂)により第一回田中裕明賞受賞。2016年、第二句集『寒林』(同)刊行。2017年度、Eテレ「NHK俳句」選者。2018年、浜松市教育文化奨励賞「浜松市ゆかりの芸術家」を受賞。現在、「鷹」編集長。読売新聞朝刊「KODOMO俳句」選者。全国高等学校俳句選手権大会(俳句甲子園)選者。早稲田大学講師。
お知らせ:国立劇場3月5日(金)、6日(土)「詩歌をうたい、奏でるー中世と現代ーにて『ベルリン連詩II』初演
国立劇場では、この3月5日(金)と6日(土)(いずれも5時30分開演)で、「詩歌をうたい、奏でる―中世と現代ー」を上演します。企画には、中世を沖本幸子、現代を一柳慧が協力しています。6日には、大岡信のベルリン連詩に触発されて一柳慧が作曲した交響曲「ベルリン連詩」(1988年初演)を踏まえて3人の日本とドイツの作曲家が連歌にならい対話を重ねて共同制作した「ベルリン連詩II」-ファザーネン通りの縄梯子(2021)が、世界初演で演奏されます。ライブ配信もあります。是非、ご鑑賞ください。詳細はhttps://www.ntj.jac.go.jp/
お知らせ:第2回大岡信賞・詩人 岬 多可子さん
朝日新聞社と明治大学が共催の今年で第2回目の大岡信賞は、詩人の岬 多可子さんが選ばれ、2月22日に発表されました。の受賞理由は「2020年刊行の『明るい水になるように』(書肆山田)における優れた言葉の結実…またその土器の詩世界が現代において持つ重要性に対して」とあります。選考委員(池辺晋一郎氏、菅啓次郎氏、蜂飼耳氏、堀江敏幸氏、やなぎみわ氏)の講評も掲載されています。授賞式は3月1日朝日新聞の東京本社で行われ岬さんに賞牌と賞状が贈られました。明治大学の大六野耕作学長と選考委員はオンラインで参加されました。
お知らせ:毎日新聞大井浩一記者「大岡信と戦後日本」番外編(上・下)
31回に渡って連載されてきた「大岡信と戦後日本」は、先般「完」をお知らせしましたが、2月16日の大岡信生誕90周年を記念して番外編が、2月3日と6日の2回(上・下)に分けて掲載されました。(上)では大岡信と丸谷才一の文学史観と「共闘」と題し、(下)では「分断に抗する『社交』」と題し、「社交する人間」を書いた山崎正和と大岡との共通性を論じています。戦後日本の社会および政治思潮の中で大岡信と大岡に共通する人々の文学的意志に焦点が当てられています。是非ともお読みください。
なお、大井浩一さんの「大岡信と戦後日本」は、「大岡信 架橋する詩人」と改題し、今年7月に岩波新書で刊行予定です。
ご期待ください。
お知らせ:第十九回大岡信研究会 3月28日(日) 講師:高柳克弘氏(俳人)
昨年まで年頭の研究会は1月に行ってきましたが、今年は3月28日にズームによるオンラインで、講師に俳人の高柳克弘氏をお迎えして開催します。
会員はじめ、会員でない方、また遠くにお住いの方もオンラインでどこからでも参加できますので、奮ってご参加ください。ズームは初めてという方には、申し込まれた後に、テストの機会を設けますので、お気軽にご参加ください。お申し込みの際、テスト希望をお知らせください。
お申し込みの方には当日使用のURLを事前にお送りします。
日時:2021年3月28日(日)14:00から15:30(受付は13:30から)
会場:ズームによるオンライン
講師:高柳克弘(俳人)
会費:会員は無料、会員でない方は1000円(視聴後に下記口座へ振込)
参加お申し込みは、こちらから</ をクリックしてお申し込みください。
会費振込先:郵便振替口座:00150-8-450238 大岡信研究会
お知らせ:毎日新聞大井浩一記者の「大岡信と戦後日本」㉚㉛にて完
毎日新聞に連載されてきた大井浩一氏の「大岡信と戦後日本」㉛回は、「80年代の焦燥」、「流行の感覚・思想に抗して」と題し、昨年11月4日に掲載されました。80年代の大岡の仕事と89年出版の「故郷の水へのメッセージ」「詩人・菅原道真」に注目して、大岡の流行するものへの抵抗感を描いています。そして12月28日掲載の㉛回は、「『世紀の変り目』にて」、「他者へ開く「架橋のうたげ」」と題し、90年代末から2000年に入る大岡の展開と展望に焦点を当てています。同時に、大井記者が大岡と接した98年に、大井記者が撮影した大岡のポートレートも掲載されています。是非ともお読みください。
約1年半続いた「大岡信と戦後日本」も、この31回を持って終了しました。今後、本にまとめられると聞いています。その時をまたお知らせできますのを心から楽しみにしています。
お知らせ:大岡信研究会会誌第六号の刊行
大岡信研究会は、2020年度会誌「大岡信研究」第六号を2020年12月20日に刊行しました。第六号は、第十七回(大久保憲一氏)研究会と第十八回(堀江敏幸氏)オンライン研究会の講演内容と詩人の文月悠光さんの選んだ大岡信の詩「悲しむとき」とその詩をめぐる「『存在』に迫る言葉」を掲載しています。
大岡信研究 2020 第六号 目次
★オンライン例会 大岡信賞 うつしの美学・・・・西川敏晴
大岡信の詩 「悲しむとき」・・・・・・・・大岡信
「存在」に迫る言葉・・・・・・・・・・・・文月悠光
大岡信研究会
第十七回 大岡信と「花神社」・・・・・・・・・大久保憲一(聞き手:西川敏晴)
第十八回 あいだに潜む波動ー大岡信《文学的断章》について・・・堀江敏幸
連載 大岡信の「ノート」と「手帖」⑥
大岡信研究会の会員の皆様へは既に発送しています。まだお手元に届いていない場合は、メニュの「お問い合わせ」からご連絡ください。
第六号の購入ご希望の方は、右欄のメニュの「お問い合わせ」からご連絡下さい。(頒価1部1000円)
なお、新規に2021年度(2021年1月1日~12月31日)の会員に申し込まれた方には、第六号を無料でお送りします。
この機会に是非、新規会員にお申込み下さい。
会員申し込みの詳細は、メニュの「入会の案内」をご覧下さい。