「折々のうた」をおもちかえり展開催中
三島の大岡信ことば館で
「折々のうた」をおもちかえり展開催中!(6月28日まで、月曜休館)
「折々のうた」は、1979年から2007年まで6762回にわたり朝日新聞朝刊の一面に連載された。毎朝、俳句や短歌や詩や歌謡が掲載され、180字の見事な鑑賞文が添えられ、一日は「折々のうた」を読むことから始まった、という人も多かった。
その成果は、岩波新書から『折々のうた』全10巻、『新折々のうた』全9巻に加えて索引まで刊行されている。また、「折々のうた」の連載中の5800回あたりの時点で、それまで取り上げられたうたを一年365日に再構成した『折々のうた 三六五日』が、2002年に刊行された。今回の展示は、『折々のうた 三六五日』の配置に従って、四季365日の「折々のうた」が、新聞連載時のコラムがパネルとなって並ぶ。
ひとつひとつのうたと文章を読み始めると、思わず別世界に引き込まれ、我に返るとまた、その次のうたにまた飛翔する。その配列は作者の「あるゆるやかな連結方法によってつなぎとめながら、全体として一枚の大きな言葉の織物ができ上がるようにそれらを編んでみたい」(『折々のうたの世界』講談社)という意図を思いながら鑑賞するとさらに興味が深まる。「今回は来館者の滞在時間が長い」(岩本圭司館長)という。ひとつ読んでまた連なる世界へと連句、連歌、連詩などのように楽しみながら、時を忘れてしまう人が多いからだろう。
それぞれの展示の横には、新聞コラムの縮刷がカードのように置かれ、好きなうたを自由にピックアップできるようになっている。言葉の織物をつくる小道具として使われた当用日記や生原稿や編集担当者が制作した索引カード、読者から送られた「折々の豆本」などの展示もある。常設展示コーナーは、大岡信と親しく付き合ったアーティストたちに捧げた詩とアート作品の展示。大岡信の詩をゆっくり鑑賞するにはとてもいい空間だ。滝口修造が大岡信に贈った「リバティ・パスポート」を久しぶりに見てとても懐かしかった。(西川敏晴記)