詩の鑑賞4
『大岡信詩集(総合詩集)「わが夜のいきものたち」』1968年、思潮社
【コメント】
おもしろいな。この詩は大岡信の詩のなかでも多くのひとが語る詩であるけれど、「瀬田の唐橋 雪駄のからかさ」が、なんで「いつも 東京は くもり」なのかは分からなくて、そのつながることない分割線の国境(くにざかい)を行ったり来たりしている大岡信が実に楽しいのだ。だから、大岡信の詩集で一番好きなのは、「旅みやげ にしひがし」で、「中国上海市 虹口区呉淞路義豊里 地番は今でも322里」と書いてあるだけで、詩人の立ちつくす姿が見える。(土屋恵一郎 大岡信研究会賛助会員、明治大学教授)