大岡信研究会:特別研究会①リポート
大岡研究会:特別研究会①は、大岡信が長く教壇に立っていた明治大学を会場にして、韓国仁荷大学校教授のワン・スギョン(王淑英)氏を招いて特別講演を行いました。
日本中世文学を研究している氏は、「折々のうた」を毎朝の楽しみにするほど大岡信の仕事に親しみ、『うたげと孤心』は自らの研究や考え方の基本になっているといいます。
今回の研究会は、大岡信が1994年と95年にパリのコレージュ・ド・フランスで行った連続講義の日本語版『日本の詩歌 その骨組みと素肌』を氏が韓国語に翻訳し、出版した機会を捉えて、『日本の詩歌 その骨組みと素肌』と東アジア」の演題で開催されました。
氏は、この本の成り立ちは、ヨーロッパ文化圏という「場」を背景にしているが、今度は漢字文化圏(韓国)である東アジアにこの本を置くことで、見えてくるものがあればと願って取り組んだとのことです。また、日本語の原題「骨組みと素肌」を「骨組」は漢詩、「素肌」は和歌を意味するのではないかとの考察を示し、韓国語では、直訳せずに「日本の詩歌、その骨格と心」と訳した背景を語りました。この本で語られる漢詩(菅原道真)から和歌(紀貫之)へと展開していく日本の詩歌史は、東アジア文化圏において大変興味深い問題として提起しました。講演では、韓国の時調(シジョ)などの紹介もあり、広く東アジアにおける詩歌について考える絶好の機会となりました。 渡辺竜樹(大岡信研究会会員)